典薬頭の縁戚に

 芋の葉陰に居る老人は 細部がはっきりしないが、 これも見覚えがある。
 「薬草大観」を著した学者であり、 典薬頭の縁戚に当たる。
 幼い頃 連れて行かれた弔いで見た 骸むくろだ。
 良く見れば、 目をつむったまま動かない通渠

 去鳥茨の後ろに居る筋肉男は 誰だ。
 心当たりがあるとすれば、 「我が穴掘り人生全六巻」の主人公だ。
 玲は 唇の片端を上げた。
 巻末の一行を 今回は見逃していない。
【この物語は、 事実をもとに書かれた作者の創作である】
 実在の人物ですらなかった。

 彼らは 死者ではないのだ。 幽霊でも 亡霊でも無い。
 おそらく、 玲の記憶だ。

 記憶の中の母が悲しい。
 記憶を変える事が出来るなら、 自分は変わるのだろうかUltra V Lift
 しかし、 記憶を塗り替えられるとは思えなかった。
 それが出来るのは、 生きて 目の前に居る人間だけだ。
 母は ずっとこのままだろう。

 死者の森に入った者は、 変われなければ消えるという。
 冷静に判断すれば、 変わるべきなのでろう。
 そうしなければ、 都にも、 典薬寮にも戻れない。
 だが しかし……。
 玲は、 初めて、 自分を馬鹿だと思った。

 ゆっくりと一つ息を吐くと、
 すっくと背筋を伸ばし、
 不遜な態度を身にまとい、
 艶あでやかに微笑んで見せた。
「母上、 ごきげんよう
 壮絶に美しい笑顔だったpico 去斑